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引ったくり防止
まず狙われないようにするため、いかにもお金持ちの旅行者というきれいな服装で大きなかばんを持って歩かないこと。そして適当な間隔をおいて後ろを振り返る。それだけでも、警戒していると思われるのでスリなど寄せつけない。立ち止まり地図を広げて読む必要がある場合は、壁際まで歩いていって背中を壁に向けて立ち読みする。すると、背後から襲われることがないため前方180度のみ気をつければ良いわけである。私が見た最も印象に残っている狙われやすさNo1の日本人を例に挙げるとすれば、ローマで見た女性2人組で全身派手なおしゃれをしていて大きなお買い上げバッグを両手に持って歩いていたことである。まさにカモがネギ背負って歩いているようなものである。
またアテネの地下鉄で実際に被害にあった日本人女性の話をしておこう。彼女は6ヶ月もの間旅行をしている旅のプロである。その日の地下鉄はかなり込み合っていたらしくギュウギュウ詰めだったらしい。その時、彼女は大きな旅行かばんと肩からクロスにしてかけていた小さなかばんを所持していた。そして警戒して財布の入っているその小さなかばんを自分の正面にキープしていたらしいが、一人の男が体でそのかばんを彼女の死角となる後ろ側へ回すように動かして、もう一人の男がそのかばんのチャックを開けて財布を盗んだらしい。電車のドアが開いたとき、彼女は盗まれたことに気づいて叫んだらしいが、大きな重い荷物を持っていて追うこともできず逃げられたらしい。わずか3駅乗っている間のことであった。
以上を総合して言えることは、なるべく両手には荷物を持たず、一定ごとに警戒しているという態度を示すことである。

ぼったくりに会う方法
まだ明るい夕方ごろであった。アテネのZeus門のところで写真を撮ったあと、岩に腰掛けて景色を眺めていると、小柄な外人が近寄ってきた。とても人懐っこく話しかけてきて、近くのホテルに滞在してガールフレンドが明後日やってくるのを待っていると語ってきた。財布から彼女の写真を見せてきて、また彼は自分がイタリアのデザイナーであると説明してきた。その後、近くにあるイタリアン・バーへ一緒に行こうと誘ってきた。少し変だとは思ったが、私は最近イタリア人の大親友ができたばかりで、ちょっとガードが下がっていたため、興味本意でちょっと行ってみることにした。
すぐそこと言う割には信号を2つほど渡ってさらに少し路地に入る。そこには男が言った通り小さなバーがあって、バーテンダーと客らしき人がいた。イタリア人と一緒にテーブルに座ると、30後半らしいちょっとケバイ女2人が我々のとなりに座ってきた。ん?、ここはおねーちゃんクラブなのか?と思ったが、店の雰囲気はそうでもなくカウンターには地元のおっさんらしき2人が酒を飲んでいる。とりあえず警戒しながらビールを各1本ずつ頼み、この4人で一般的な世間話が始まった。ビールが来た時、一応値段をチェックしたが10ユーロで、少し高いなと思ったがぼったくりの値段ではないし、男もリラックスして楽しんでいるようだったので、とりあえず彼に気を使って10分ほど話したらとっとと帰ろうと思った。女たちはそれぞれフィリピンとルーマニア出身らしく、このバーで働いているらしい。隣に座った女は、私に話しかけてきて始めは普通であったが、だんだん甘い言葉を投げかけてきた。さらにエスカレートしてきて私の腕や太もも辺りを触ってきて、だんだん妙な雰囲気になってきたぞと思った。
このようにテーブルに着いてから15分ぐらい経つと、酒に弱い私はほろ酔い状態になっていて、4人の話は盛り上がり、イタリア人側の女がシャンペンを頼んだ。すると私の側の女もシャンペンを頼んでいいかと聞いてきて、勝手に頼んでみてはと言った。こうしてシャンペンを頼んだあとさらに10分くらい経って、もう十分だと店を出るため勘定をくれと言った。そして、その料金を見たときである。値段が何と195ユーロ(2万5千円)になっていた。バーテンダーにこの価格はおかしいと言うとテーブルのメニューを見ろ、と言ってきて調べてみるとその他のアルコールはすべて普通の値段で、シャンペンだけありえない価格に表示されていた。はあ?!と思いながら、イタリア人を見ると、彼は真剣な顔をして現金200ユーロを自分の財布から取り出して隣の女に支払っているのが見えた。それを見た私は頭に血が上って、こんな馬鹿な話があるかと思い、自分が飲んだビール代とチップの合計15ユーロをおいて、立ち上がりさっさと出口に向かおうとした。するとバーテンダーが支払いがすまない限りここを出さないと言わんばかりに通路に立ちふさがってきた。奴は、私より頭一つ分、背が高かったが、私は相手をにらみつけ右手の拳を相手の胸元に当てて威圧すると、相手は俺の体に触るんじゃねえと言ってきた。ちらっとテーブルを見て、ふと思ったのは女2人とクソイタリア人はグルだという事である。金の支払いも私にわざと見えるように行なったのである。とにかくここを脱出しようと考え、目の前にいるバーテンダーを両手で思いっきり押しのけてドア出口へと走り出た。ストリートを渡ったところで振り返ると彼らは追って来ておらず、とりあえず一旦落ちついてメインのストリートまで向かった。こうして危機迫る状況から脱出し、一転して数人の人々が行き交うごく平凡な街中へと戻ってきた。時はまだ明るい夏の夕方8時半ごろで、まさかこんなに危険な状況と楽しい時間が隣り合わせになっているとは想像もできなかった。
このぼったくり事件に会った経路は、まさに旅行ブックが説明していた通りに起こったもので、ひどい体験ではあったが、ある意味感心してしまって笑いが止まらなくなった。私はキックボクシングのトレーニングをしていたので喧嘩はそれなりに自身があったが、実際事件真っ只中では頭が混乱していたので逃げるだけで精一杯であった。次回は落ち着いて対処し相手をブッ倒して懲らしめてやろうと心に誓った。